2015.3.7(sat)

杢目金のお守り刀

 古来より刀剣には神秘的な力が宿るとされてきました

この神秘的な力によって 邪気や災厄を払い 身を守る「お守り」が 「お守り刀」 です

 

 

以前 全日本刀匠会が主催する 「お守り刀展覧会」 に出品する作品のお手伝いをしました

 

刀身だけでなく外装も審査の対象になるということで いままでにないものを作ろうということになり

杢目金の鞘(さや)を作ることになったのです

 

私は刀剣の世界に関しては 全くもって無知なのですが 

杢目金の技法は もともと江戸時代に刀の鍔(つば)のおしゃれとして考案されたもので

刀の仕事をすることも何か勉強になるだろうと お引き受けしました

 

IMG_1380-0.JPG

 そして苦心の末に 出来上がったのがこの 「杢目金鞘出鮫合口金具拵」 です

 

細長い杢目金の地金をつくり 半分にカットして 鞘の形に成形したのち 2枚を鑞づけでつなぎ合わせて筒状にしてあります

鞘師の職人さんが型を作ってくれたのですが

この型に寸分たがわず ピタリと合うように作らなければなりません

これが大変です

 

写真でもわかると思いますが 刀の反りに合わせて 鞘も少し反らさなければなりませんし

さらに微妙でわかりにくいですが 付け根の方と先の方では微妙に太さが違います

先に行くほど細くなっています

筒の断面を見ても 刀の刃の方が少し細くなるように 細長い卵型になっているのです

これを歪みなく ぴしゃりと作らなければなりません

苦労しました。。

 

見た目の出来はなかなか良かったのですが 少し問題がありました

「重さ」です 

金属で作っているので 木の鞘に比べて重いのは当然なのですが 少し板厚が厚かったようです

 

成形の時にできた表面の凹凸を最後に削って平らにしようと

安全策をとって少し板厚を厚めにしていました

さらに杢目金の性質上 薄くしすぎると 鑞づけでつないだ部分など 

最後の研磨の時に 模様に影響する恐れがあります

重さのことは頭になかったので 結果的に板厚が厚めになり 少し重くなってしまいました

 

実際に刀として人斬りに使う訳ではないので

少し重くても問題ないかもしれませんが 刀の拵としての美を追求するなら

そこまでこだわって作らなければならないでしょう

 

 

と いうことで翌年 反省点を生かしつつ作った作品がこちら↓ 

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杢目金筒鞘柄金具合口拵」

 

前作は鞘だけが杢目金でしたが こちらは鞘だけでなく柄まで杢目金です

 

当然 前作以上に重くなりますので なるべく板厚を薄くして軽く作らねばなりません

さらに素材も四分一(銀と銅の合金)を多く使用したため 堅くて加工が困難で

柄の部分には 握った時に小指が引っかかるような打出しも施してあります

難度は前回よりもかなりアップしました

 

重さは前回に比べると かなり軽くなりましたが

できればもう少し軽く作りたいところです

まだまだ改善の余地ありです

 

 

刀の仕事は「こう作らなければいけない」というルールがとても多いです

自分の作品をつくるように自由にという訳にはいきません

しかしそれが逆に力を集中させることになるとも感じました

多くの専門の職方が 分業で一つのものを集中して作り上げた時(このお守り刀も7人の職方の分業です)

とてつもなくクオリティーの高いものが作れるのでしょう

 

 

またいつか3作目にチャレンジしたいものです

 

 

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